良性乳児けいれん

乳児期にけいれんなどで発症する発作性の疾患で比較的頻度の高い良性乳児けいれんについて解説します。

概要

生後半年頃、乳児期の熱のない時にけいれんなどの発作を群発するてんかんで、発達には問題なく1歳半頃には発作を起こさなくなります。治療は容易で予後も非常に良好ですが、学童期以降に発作性運動誘発性ジスキネジアを生じることがあります。ただし、この時期発症のてんかんには難治のものも多いため、典型的ではない場合はその他の疾患を疑って精査する必要があります。

*従来の呼び名で日本ではまだまだ広く使用されているため本稿では「良性乳児けいれん」としましたが、国際抗てんかん連盟(ILAE)の新しい分類では「自然終息性家族性非家族性乳児てんかん」となっています。

*てんかんではないとする記事などもありますが、上記のようにILAEでは乳児期のてんかん症候群として分類されております。

*乳児期のてんかんの特徴については「てんかんとは」をご参照ください。

好発年齢

80%の方は1歳未満の乳児期に発症し、多くは4~8か月と生後半年前後です。ほとんどの方は1歳半頃に発作を起こさなくなり、基本的に3歳以降には見られません。

発作

発作の持続時間は短く数分程度で、1回生じると何回も起こす(群発)ことが多いです。

発作の症状はいろいろあり、いわゆる全身のけいれんを起こすもの、ぼーっとして視線が合わなくなる発作など多彩な症状を起こします。

基本的には発作以外に症状は認めず、発達の遅れや麻痺などの症状は見られません。

診断

血液検査、髄液検査、画像検査、脳波検査などでは全て異常は見られず正常です。

偶然発作時を脳波で捉えてしまった場合や、発作直後に頭部MRI撮影を行った場合などで異常所見が見られることもありますが、基本的に発作がない時期には正常です。

発達が正常であること、2歳未満での発症であること、熱のないときに短い発作を繰り返す(群発する)こと、発作のないときの脳波が正常であることなどから診断します。

良性乳児けいれんは家族内発症が知られており、ご家族の幼少期に同様の症状があった場合は特にこの疾患である可能性が高くなります。

良性乳児けいれんの原因遺伝子のひとつにPRRT2遺伝子というものがあり、これは発作性運動誘発性ジスキネジア(または発作性運動誘発性舞踏アテトーゼ)という疾患の原因遺伝子でもあります。学童期以降に急に体を動かしたり運動を始めたりすると手足に勝手に力が入ってねじれてしまったりする症状を起こします。

ご家族に発作性運動誘発性ジスキネジアまたはそれを疑う症状のある方はICCA(infantile convulsion and choreoathetosis)症候群といって良性乳児けいれんのお子様もPRRT2遺伝子異常である可能性が高く、学童期以降に発作性運動誘発性ジスキネジアを起こす可能性がありますので注意が必要です。

治療

少量のカルバマゼピンの内服治療が非常によく効き、基本的にはすぐに発作は抑制可能です。

カルバマゼピンの内服を開始しても発作が抑えられない場合は他の疾患を疑う必要があります。

一般的に発作を止めるために使用されるミダゾラムやジアゼパムは無効であることが多いです。

予後

治療により発作は容易に抑制され、発達も基本的には問題ありません。

1歳6か月頃までにはほとんどの方が発作を起こさなくなるため、くすりの副作用や長期投与の影響を考えると漫然と内服を続けることは避けるべきでしょう。発症時期にもよりますが、発症から半年~1年程度、1歳半~2歳頃までに治療の終了を検討することが多いです。

まれにフォロー中に脳波異常を認めることがありますが、発作を再発することはありません。そのため脳波異常を理由に治療を継続する必要はありませんし、脳波異常に伴って発作を再発するなど治療を継続しなければならない状況となるようなら良性乳児けいれんではありません。

最初に良性乳児けいれんと診断されても、カルバマゼピンだけでは発作が治まらない、発達の遅れなどの発作以外の症状が見られる、3歳を過ぎても発作が再発して治療を終了できない、などの場合は別の疾患を考えて診断や治療を見直さなければなりません。

乳児期発症のてんかんには、難治なものやコントロールをきちんとつけないと発達に影響が出てしまうてんかん性脳症も多く、良性乳児けいれんと決めつけて漫然と治療を開始することなくきちんとそれらを鑑別することが非常に重要です。

良性乳児けいれんとして典型的でない場合は一度小児神経専門医にご相談されるのがよいでしょう。

また、前述のように、良性乳児けいれんの原因遺伝子により発作性運動誘発性ジスキネジアを起こすことがあります。

小学校入学後の学童期以降に、急に立ち上がったり走り出したり、運動開始直後に手足にねじるような力が入ってうまく体を動かせなくなる症状がでます。運動が苦手、不器用、チックなどと言われてしまっていることも多いです。

このお話をご家族にすると、受診も診断もされたことはないが実はご家族にその症状があるということがよくあります。

良性乳児けいれんと同様にカルバマゼピンがよく効き治療可能ですので、このような症状があらわれたときには小児神経専門医にご相談ください。

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