日本てんかん学会ガイドライン作成委員会より、新型コロナウイルス感染症(COVID19)流行期におけるてんかん診療指針が公開されましたので、当院に通院されている患者様向けに項目の取捨選択および加筆修正し、当院の対応も加えて解説いたします。
てんかん患者は新型コロナウイルスに感染しやすいか
てんかんをお持ちの方が新型コロナウイルスに感染しやすいという根拠や、感染した場合に重症化しやすいという根拠はありません。
しかし、てんかんの原因として何らかの基礎疾患や合併症をお持ちの方、医療的ケアのある方に関しては注意が必要です。
新型コロナウイルス感染症はてんかんを悪化させるか
新型コロナウイルス感染症がてんかんを悪化させるというデータは今のところありません。
新型コロナウイルスに限らず、ウイルス感染に伴っててんかん発作を起こすこともありますし、ウイルス感染による脳炎脳症に伴って発作などを生じる可能性はあります。
新型コロナウイルス感染症の症状としててんかん発作がみられるか
新型コロナウイルス感染症の神経症状をまとめた論文では、てんかん発作は多くないとされています。しかし、前述のように新型コロナウイルスに限らず、ウイルス感染に伴っててんかん発作誘発のリスクが高まることがあります。
新型コロナウイルス感染症による髄膜脳炎等の中枢神経感染症は比較的稀とされていますが、報告がないわけではありません。ただ、新規に発症する可能性があるということであり、すでにてんかんをお持ちの方が新たに罹りやすいというものではありません。
てんかん患者の定期外来受診はどうするか
外来受診にともなう感染リスクを低減するために、病状の安定した定期受診の患者様に関しては受診頻度を減らしたり、電話再診・オンライン診療等の方法を可能であれば用いるとされています。
当院では、病状の安定した患者様に関しては可能な限り長期の処方をし、ご希望があれば電話再診やオンライン診療にも対応しておりますのでご相談ください。
外来脳波検査の適応と実施はどうするか
脳波検査に関しては関連6学会から合同で注意喚起が出ており、当院も提言に従った以下の対応をしております。
- 脳波検査の適応に関して十分に検討し、不急の検査は延期する
- 脳波検査の実施に当たっては、検査者はマスクおよび手袋の着用、被検者もマスクを着用する
- 過呼吸賦活に関しては適応を十分に検討し、必要性の低い場合は省略する
抗てんかん薬と相互作用に注意すべき新型コロナウイルス感染症治療薬は
酵素誘導薬(カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、プリミドン)と呼ばれる一部の抗てんかん薬は、一部の抗ウイルス薬との相互作用によって抗ウイルス薬の血中濃度を低下させることがあるため注意を要する、とされています。
万が一新型コロナウイルス感染症にかかって医療機関へ入院した場合は、てんかんの治療薬を内服していることを必ず伝えるようにしましょう。
妊娠中のてんかん患者の注意点はなにか
妊娠中の新型コロナウイルスの罹患率や重症化率は一般の方と変わらないとされています。
ただし、前述のように感染に伴っててんかん発作が誘発される可能性があり、妊娠中のてんかん発作は発作のタイプによっては望ましくないものもあるため、一般の方よりも注意は必要です。
その他の重要なこと
どのような形であれ、治療をきちんと継続することが最も重要です。
当院では、通院が難しい方や病状が安定されている方のために、電話再診やオンライン診療の対応をしてまいります。
受診できないことにより内服薬が不足してしまうことは最も避けなければならないことです。十分な量を処方して対応致しますが、残薬には余裕を持って受診するようにしましょう。
病状が安定していない方や、直接お会いして診察をしたりお話をお伺いしなければならない方、検査が必要な方等に関しては通院が必要となります。
通院をされる方は、マスクを着用し人との距離を確保する等の十分な感染予防策をとっていただき、当院も十分な感染対策をおこなってお迎え致します(当院の感染対策に関してはこちらをご確認ください)。
また、周囲の大人たちはいらだち、訳もわからぬまま人との関わりを避けるように指示をされ、外遊びも禁じられ、さらに十分な説明もないままに休校が続いている非日常状態において、こどもたちの心のケアも非常に重要な問題です。
こどもたちの心のケアに関しては国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所知的・発達障害研究部から提言が出ておりますのでご参照ください。
ご不明な点やご不安な点などありましたら何なりとスタッフまたは医師までご相談ください。
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