てんかんと運転免許

てんかんがあると運転免許が取れないのではないか、とてんかんのある方やそのご家族から運転免許に関するご質問をよく受けます。てんかん診療に関わる医師として患者様が運転免許取得年齢になっていくときには必ず説明が必要な内容となります。

よく受ける質問を中心に、てんかんと運転免許に関して知っておいていただきたい内容について解説します。

てんかんと診断されていると免許が取れない?

以前はそうでしたが、現在はてんかんと診断されていても運転免許は取得できますし更新もできます。ただし、それには条件があります。

2002年6月の改正道路交通法により、てんかんは絶対的欠格事由(てんかんの診断があるだけで拒否)から相対的欠格事由(運転への支障の有無で判断)となり、運用基準の要件1)(図1)を満たせば免許を拒否しない(≒持つことができる)こととなっています。

図1 道路交通法施行令 運用基準 抜粋

運用基準は色々と細かいのですが、5年間発作が起こっておらず医師が今後も起こるおそれがないと診断した場合や、2年間発作が起こっておらず医師がしばらく発作のおそれがないと診断した場合などは持つことができます。

つまり、発作が2年間起こらず医師の診断があれば運転免許は取得や更新が可能となります。

それ以外に、発作があっても1年間みて運転に支障がなく悪化するおそれもないと医師が診断した場合や、2年間みて睡眠中に限定した発作で悪化するおそれもないと医師が診断した場合も拒否されません。ちょっと複雑ですね。

また、6か月以内にそれらに該当すると診断された場合は6か月間保留されます。例えば、薬の減量中に再発して免許の更新に重なってしまった、などの場合です。もともと長期に発作がなく経過していたので薬を再開すれば6か月以内にまた無発作の状態に戻るはず、と医師が考えているようなら更新を拒否ではなく保留にしてもらえます。

細かく規定されていてわかりにくいのですが、要するにてんかんだから取得できないわけではなく、症状によっては取得できない場合がある、ということです。

運転免許の取得や更新をお考えの方は主治医にその希望をしっかりと伝え、現在の発作状況の評価を受け、公安委員会指定の診断書を書いてもらうことで運転免許の取得が可能となるかもしれません。

運転免許を持つことができるかどうかの判断や公安委員会指定の診断書作成は慣れていない医師では対応が難しいこともありますので、その場合はてんかん専門医へ紹介してもらうとよいでしょう。

てんかんであることを隠して免許を更新できる?

2014年6月施行の改正道路交通法により、虚偽申告に対する罰則が設けられました。そのため、できるかできないかというより、してはいけません

公安委員会への申告は取得や更新のときだけでよく、発作が起きたからといってすぐに申告する義務はないのですが、医師から運転を控えるように指示された場合は従うようにしましょう

免許の取得が出来ない状態であるにも関わらず運転していることが判明した場合、医師は運転をしないように説得するように求められています。また、更新の際には申告の義務があり虚偽申告には罰則があることを医師は説明しなければなりません。

免許の更新や取得時に事実と異なる記載をした場合、1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性がありますので必ず正しく申告するようにしましょう

さらに、医師の勧告に従わずに運転を継続していることが判明した場合は、医師の守秘義務や個人情報保護法の制約を受けることなく公安委員会に届け出ることができる2)、とされています。医師から運転を控えるように指示されるということは発作再発のリスクが高い状態であるということです。交通事故を起こしたときの影響を考えても絶対に主治医の勧告には従って頂きたいと思います。

てんかんなどの病気を理由に免許を拒否された場合、3年以内に再取得する場合は学科試験や実技試験は免除されるように救済措置が取られますので、残念ながら再発してしまった場合もしっかりと治療を立て直すことで再取得を目指していきましょう。

てんかんの薬を飲んでいても運転できますか?

てんかんのお薬の添付文書(説明書)には「本剤投与中の患者には自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。」と必ず記載されてしまっているため、場合によっては薬局でそのように指導されてしまうことがあるかもしれません。

しかし、てんかん治療は、抗てんかん薬によって発作を抑えることで自動車運転を含む日常生活を支障なく送ることが出来るようにすることを目的としており、その抗てんかん薬内服によって日常生活が制限されてしまうことは矛盾してしまいます。

日本てんかん学会は2014年4月に『「抗てんかん薬の DI (添付文書)における自動車運転等の禁止等の記載は、「抗てんかん薬を服用するすべての患者」に適用されるのではなく、「自動車運転等に支障をきたす副作用が生じていると考えられる患者」にのみ適用されるべきである。』との見解を発表3)し、2018年7月に再度「お願い」という形で学会の見解は法的根拠となり得ることを強調しています4)

つまり、実際に眠気などの運転に支障のある副作用が生じていない場合は一律に運転を禁止するべきではない、というのが日本てんかん学会としての見解です。

てんかんがあると仕事で運転できない?

大型免許および旅客輸送に関わる免許(第2種免許)に関して2012年10月に発表された日本てんかん学会の提言5)では、1回のみ発作があった方は無投薬で5年、2回以上の発作があった方は無投薬で10年の間に再発がなければ取得可能、としています。

国際抗てんかん連盟のてんかん消失の定義は、過去10年間無発作でそのうち過去5年間無投薬であること、となっております6)ので、これとほぼ同等の状況ということになります。つまり、基本的にはてんかんがあると大型免許や旅客輸送に関わる運転はできないというのが日本てんかん学会の見解と考えられます。

道路交通法施行令の一定の病気に係る免許の可否等の運用基準1)においても、日本てんかん学会の見解として無投薬5年でないと大型免許および第2種免許の適性はない、としておりますので、内服を終了して5年間発作がない状況にならないと取得は難しいということになります。

てんかん発作による交通事故は多い?

ひとたびてんかん発作による交通事故が起こるとメディアで取り上げられることが多いため、あたかもてんかんのある方は交通事故を起こしやすいと誤解されている方も多いと思います。

本当にてんかんのある方はてんかんのない方よりも交通事故を起こしやすいのでしょうか?

日本てんかん学会の発表した平成26年度警視庁委託調査研究報告書7)によると、発作のない期間が長ければ長いほど交通事故リスクは減少し、無発作6か月のてんかんの方であっても65歳以上の方や20歳代男性の方よりも交通事故リスクは低く、無発作3年になると全運転者のリスクとほぼ同等となっています(図2)。

図2 文献7より引用 全運転者のリスクを1.0としている

その一方で、公安委員会へてんかんがあることを申告していない方が31.8%、医師から運転に関する説明を受けたことのない方が12.4%、医師は運転免許を保有していないと思っていたのに実は保有していた方が14.3%、とご本人のみならず医師にも問題のあるケースが多数見受けられます。

医師は運転免許を持つ可能性のある方には運転免許に関する注意点を正しく伝え、ご本人は運転免許を持っていることを医師に伝え、運転免許の取得や更新の際には公安委員会に正しく申告することが重要です。

つまり、てんかんがあっても正しく申告し、適切な指導と健康管理をされ、発作が落ち着いていればてんかんのない方と同等のリスクで運転が可能ということになります。

てんかんのある方より交通事故リスクの高い20歳男性の方が事故を起こしたとしても「20歳男性なのに運転していた」とは言われません。それと同じく、てんかんのある方が万が一事故を起こしてしまったとしても、法に則って正しく申告して免許を許可されていた方であれば「てんかんがあるのに運転していた」と批判されるものではないと思います。

ただし、医師に運転免許を保有していることを伝えていない方や公安委員会に正しく申告せずに取得や更新をした方はその限りではありません。前述の虚偽申告にあたり罰則の対象となる可能性がありますし、事故の責任を問われることは免れませんので、必ず正しく申告するようにしましょう。

てんかんがあってもなくても誰にでも万が一は起こり得ますし、患者様には睡眠不足や体調不良のときなどには運転しない、などきちんと自己管理をされている方も多くいらっしゃいます。

そもそも、てんかんのない方も、睡眠不足など過労時の運転は病気や薬物の影響とならんで道路交通法で禁止(道路交通法 第六十六条 過労運転等の禁止)されていることはご存じない方も多いのではないでしょうか。本当は夜勤明けなどで眠くて判断力が低下しているとわかっている状態では運転してはいけないのですね。

おわりに

以上、当院で患者様にご説明している内容や患者様からご質問を受けることの多い内容について解説しました。

てんかんがあると運転できないと諦めてしまっている方や、運転してはいけないと間違った伝え方をしている医療者やご家族、てんかんがあるというだけで交通事故が発生した際に理不尽な批判をしている方々が残念ながらいらっしゃいます。

てんかんがあっても、きちんと管理されていれば運転できるということが多くの方々に伝わり、てんかんのある方々が不要な制限や不当な批判を受けることのないように、少しでもこの記事がお役に立てれば幸いです。

参考文献

  1. 日本てんかん協会, 道路交通法施行令の運用基準(抜粋). https://www.jea-net.jp/wp-content/themes/jea-net/img/page/epilepsy/drive/document_pdf_02.pdf [閲覧日:2020.12.18]
  2. 日本てんかん学会, てんかんに関する医師の届出ガイドライン. https://square.umin.ac.jp/jes/images/jes-image/140910JES_GL.pdf [閲覧日:2020.12.18]
  3. 日本てんかん学会, 抗てんかん薬の薬剤情報添付文書における自動車の運転等に関する記載についての見解. https://square.umin.ac.jp/jes/images/jes-image/tenpubunsyo20141002.pdf [閲覧日:2020.12.18]
  4. 日本てんかん学会, 抗てんかん薬の添付文書における自動車運転禁止に関する記載についてのお願い. https://square.umin.ac.jp/jes/images/jes-image/Eplipsy_tenpu201807.pdf [閲覧日:2020.12.18]
  5. 日本てんかん学会, てんかんと運転に関する提言. http://square.umin.ac.jp/jes/images/jes-image/drivrepropose2012.pdf [閲覧日:2020.12.18]
  6. Fisher RS, Acevedo C, Arzimanoglou A, et al. ILAE official report: a practical clinical definition of epilepsy. Epilepsia 2014;55:475-82.
  7. 日本てんかん学会法的問題検討委員会:「平成 26 年度警察庁委託調査研究報告書:てんかんにかかっている者と運転免許に関する調査研究」の解説と検討.てんかん研究 2015;33:147-58.

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