てんかんの治療 ~お薬以外の治療~

前回はてんかんの治療に関する考え方と、お薬による治療の流れについて簡単に解説しました。

今回はお薬以外の治療についてご紹介します。

てんかん治療の種類

てんかんの治療は一般的に抗てんかん薬の内服治療から始めます。

内服治療を始めても発作が完全に抑えられない場合は内服薬を増量したり、2剤、3剤と追加したりしていきますが、それでも抑えられない場合はその他の治療を検討していきます。

特定のてんかん症候群にしか使うことの出来ない特殊な抗てんかん薬や、ある種のてんかんには免疫系に作用する特殊な薬剤による治療を行うこともありますので、その場合は追加治療として検討します。

その他、食事療法であるケトン食療法、てんかんの原因を取り除いたり症状を軽くするための手術を行うてんかん外科治療など、抗てんかん薬以外にもさまざまな選択肢があります。

特殊な内服薬による治療

抗てんかん薬の中でも特定の症候群にしか使用することの出来ないお薬があります。

ビガバトリン(サブリル®)

ウエスト症候群に対してのみ適応のある内服薬で、ACTH療法と効果はほぼ同等と言われています。

しかし、進行性で不可逆性(もとに戻らない)の視野障害が副作用として報告されているため、眼科で網膜電図という特殊な検査を実施できる登録施設でしか処方することができず、その施設が非常に限られているため、どこでも誰でも受けられる治療ではありません。

ただ、ウエスト症候群の基礎疾患として頻度の高い結節性硬化症に関しては、ACTH療法により心臓腫瘍が大きくなる懸念がある上、結節性硬化症に限定するとACTH療法より成績が良いという報告もあるため積極的に使用を検討される場合もあります。

ルフィナミド(イノベロン®)

レノックス・ガストー症候群に対してのみ適応のある内服薬です。レノックス・ガストー症候群では強直発作や脱力発作が多く、特に突然力が抜ける脱力発作では転倒などによる怪我が多く大変です。

日常生活で困ることの多い強直発作や脱力発作の頻度を減らすことができるため、他の薬剤で効果が不十分な場合は積極的に使用を検討しています。

副作用として嘔吐や下痢などの消化器系の副作用を認めることが多いのですが、その辺りに注意すれば比較的安全に使用できます。

スティリペントール(ディアコミット®)

ドラベ症候群に対してのみ適応のある内服薬です。ドラベ症候群は乳児期に発症して主に熱のあるときに長時間続く(重積)けいれん(強直間代発作)を起こしてしまうことが特徴で、急性脳症になってしまったり命に関わることもあります。

スティリペントールは強直間代発作の頻度を減らしたり、発作の持続時間を短くする効果が期待できるため、特に重積発作の多い方には早期の使用を検討します。

ただ、併用する薬剤であるバルプロ酸ナトリウムやクロバザムの血中濃度を上げてしまうこと、眠気や食欲低下、体重低下などの副作用の頻度が高く、投与量の調整が非常に難しいことから、使用に慣れた医師でないと難しいお薬です。

特殊な薬による治療

ウエスト症候群に対するACTH療法のように、特殊な薬剤による治療も行われることがあります。

ほとんどの場合、てんかんの中でも重症度の高い疾患が対象で、徐波睡眠時持続性棘徐波を示すてんかん性脳症、ランドー・クレフナー症候群、ラスムッセン症候群などではステロイドパルス療法や免疫グロブリン療法などの点滴治療が行われることもあります。ただ、明確なエイデンスはないためウエスト症候群に対するACTH療法ほど一般的ではなく、効果も個人差があったり一時的であったりすることもあります。

効く人には効く、ケトン食療法

「食事療法」という言葉が一人歩きして、少しでも効果が期待できるなら、と独断で試してみようとする方がいらっしゃいますが、きちんと管理をされないで行う食事療法はてんかんの治療効果がないだけでなく健康を害する恐れがありますのでかえって危険です。必ず主治医の判断と指示のもとで行うようにしてください。

ケトン食療法の基本的な考え方は、糖質を極度に制限して脂質中心の食事にすることで「ケトン比」と呼ばれる糖質と脂質の比率を一定まで上げて、脳が糖質ではなく脂質から代謝されて作られるケトン体を栄養としてエネルギーを得るように代謝を変えることによっててんかんに対する効果を期待するものです。

お口から食べられる人はレシピを参考に食事を作りますが、ほとんど油で作りますので結構大変です。経管栄養の方はケトン比の調整されたケトンフォーミュラという特殊ミルクがありますのでそれを使用します。

一部の難治てんかんには、全員ではありませんが有効なことがありますので、何種類も抗てんかん薬を使ったけど危険な発作が多くて困っている、筋緊張が強くて困っている、発達がどんどん退行して困っている、など困り感の強い方は一度試してみる価値のある治療となります。

発作ゼロは目指せなくても、少し減った、脳波が良くなった、緊張がやわらいだ、少し笑顔が見られるようになった、唾液や誤嚥が減った気がする、など個人の感想の域を出ないことも多いのですが、ご家族からは何らかの効果の報告を受けることも多々あります。

てんかん外科治療という選択肢

日本神経学会監修「てんかん診療ガイドライン2018」では、外科治療を考慮する難治(薬剤抵抗性)てんかんの判定を「適切な抗てんかん薬2~3種類以上、十分な血中濃度で2年以上治療しても、発作が1年以上抑制されていないてんかん」としています。

発作を減らしたり軽くすることが主な目的ですが、発作が抑制できていないことで精神運動発達に影響が出てしまっている場合は発達を促すことができる可能性もあります。当院でも上記に該当する患者様に関して、一度は手術適応の判断のためにてんかん外科を有する近隣のてんかんセンターへご紹介して連携を取るようにしています。

てんかん外科による外科治療には、発作の消失を目的とする手術と発作の軽減を目的とする手術があります。

発作の消失を目的とする手術は切除手術と言って、発作の原因となっている脳の領域を切除する手術です。脳の正常な部分を取ってしまうと後遺症を残してしまいますので、術前にさまざまな検査を行って病変の範囲を正確に特定します。てんかんの原因となっている領域が明らかなてんかんや一部のてんかんでは手術により発作消失も目指すことができます。

特に海馬硬化を有する内側側頭葉てんかん、というてんかんに関しては非常に手術成績が良いことが知られていますので、あまりお薬の治療で粘らずに早期にてんかん外科の先生に適応を判断してもらうようにしています。

発作の消失は難しくても発作の程度を軽減することを目的とする手術に、脳梁離断術と迷走神経刺激術(VNS)があります。

てんかん発作は脳の一部から電気的な興奮が始まり、神経線維を伝わって脳全体に広がることによって大きな発作に進展します。脳梁離断術はこの電気的な興奮を伝わりにくくするように遮断する手術で、発作を軽くする効果を期待します。

迷走神経刺激術は頚部を走る副交感神経である迷走神経を電気的に刺激する治療です。心臓ペースメーカーのように刺激装置を皮下に埋め込み設置します。実施には資格が必要で対応できる施設は限られ、刺激の調整などのために定期的に通院する必要があります。てんかん外科を有するてんかんセンターであれば基本的には対応可能です。

治療はひとつではありません

ご紹介したように、てんかんの治療にはお薬の治療以外にもさまざまな治療があります。

少量のお薬による治療だけで発作をゼロにできるに越したことはないのですが、お薬の治療だけでは発作が抑えきれない場合も、当院では周辺のてんかんセンターと密に連携してさまざまな治療のご相談を承っております。

発作が抑え切れていない場合は多くの悩みや不安があると思います。当院ではお薬の調整だけでなく、今後のさまざまな治療の選択肢を一緒に考えていきますので、お気軽にご相談頂ければと思います。

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