てんかん発作時の対応

前回の記事(もしかしててんかんかも? – てんかんの発作を疑う症状)で、てんかん発作はけいれんだけでなくいろいろな症状があることを書きました。

今回はてんかん発作が起きたときの対応や気をつけるポイントについて解説します。

発作が起きたときの基本的な考え方

前述のようにてんかん発作にはいろいろな症状があります。意識を失わない発作、意識を失う発作、倒れる発作、倒れないけど自分では動けない発作、自分である程度動ける発作などです。それぞれで気をつけるポイントは微妙に変わってきますが、基本的な考え方としては

  • 安全確保
  • 発作の様子をよく観察
  • 記録を残す

この3点かと思います。発作を起こしたご本人でも目撃された方でも基本的に同じです。

発作が起きそう、または起きた場合、落ち着いて速やかに安全確保します。すなわち、例えば自転車に乗っていたら止まって道路の端に移動する、倒れそうになったら座ったり横にしたりする、吐きそうだったら顔を横に向ける、家事をしていたら火を止める、お風呂であればシャワーを止めたり湯船から出る、などです。

発作の様子は非常に重要ですので、ご本人であっても目撃者であってもよく観察して可能な限り記録を残しておきます。ご本人はどこからどこまで覚えていたかをメモしておくと良いでしょう。ご家族の場合はスマートフォンで動画を撮影しておいて頂けると診察の際に有用です。ご家族以外の場合(友人や知人など)はご本人とのご関係にもよると思いますので、発作が起きたときの対応はご本人と話し合っておくと良いでしょう。

発作の様子を記録したメモや動画は治療にとって非常に有用な情報となりますので、主治医の診察の際に確認してもらうようにしましょう。

安全確保とは?

確保すべき安全はそのときの状況によって異なりますが、発作そのものによる外傷を防ぐ、発作によって動作や意識が制限された状態での事故を防ぐことで命を守る行動になります。

発作そのもので命に関わることは極めてまれ(心停止を伴う発作や長時間続く重積などが主な原因となります)ですが、発作に続発した事故は命に関わることがあり、それを予防することは非常に重要です。

外傷を防ぐ

意識を失って倒れる発作の場合、転倒に伴う外傷を防ぐために安全な場所に横に寝かせ、周囲に危険なものがないかどうか確認してあれば遠ざけます。眼鏡をかけていればはずしましょう。

事故を防ぐ

  • 溺水
  • 誤嚥
  • 交通事故
  • 転落
  • 火災・やけど

発作に続発して起こり得る事故には上記のようなものがあります。なかでも頻度が多く直接的に命に関わるのが溺水です。

プールや家族での温泉施設、友人との海水浴などは人の目があり万が一発作が起きても救助できるため行くことはできますが、必ず目を離さないようにし、いざというとき慌てないために発作が起きたときの想定はしておいた方が良いでしょう。意識を失って倒れる発作の場合、一人で水に入る行為はお勧めできません

水中での発作を目撃したら、まずは落ち着いて顔(鼻と口)を水の外に出した状態で体を支えて下さい。発作中に無理に引き上げようとすると水を飲んでしまう可能性がありますので、引き上げるのは発作が治まってからにしてください。

意識を失って嘔吐を伴う発作もしばしばありますが、そのようなときに仰向けに寝ていると誤嚥といって肺に吐物が入ってしまうことがあります。意識のない状態で吐きそうになったら顔やからだを横に向けて吐物が口にたまらないようにしましょう。

道路で発作が起きた、または起きそうになった場合、交通事故に遭わないように道路の端に移動しましょう。また、万が一の時のリスクが非常に高いため、高所作業など転落すると危険になるような状況は可能な限り控えた方が無難でしょう。

火災ややけどを防ぐため、料理をしている場合は速やかに火を消します。また、救急車を呼ぶ場合も家を留守にすることになりますので、火の元は必ず確認するようにして下さい。

絶対にしてはいけないこと

良かれと思ってする行為であっても、事故を誘発するような行為は絶対にしてはいけません。具体的には発作中に口の中に何かを入れる行為です。

よく見られるのが

  • 舌を噛まないように割り箸やタオルをかませる
  • 意識のない状態で薬や冷たい水を飲ませようとする
  • 食事中の発作で慌てて口の中の食物を掻き出そうとする

などです。いずれも嘔吐を誘発したり誤嚥の原因になります。口の中に指を入れる行為は嘔吐を誘発するだけでなく介助者の指が噛まれて怪我をする原因にもなりますので絶対にしないでください。

発作がおさまったら

発作は脳が勝手に電気活動をしている状態なので、発作が終わった後は脳が疲れてしばらく休む状態になります。

そのため寝てしまうことがありますが、そのまま休ませてあげるのがよいでしょう。ただし、群発といって再度発作を起こすことがありますので、すぐに動かしたり帰したりしないでしばらく介助の方は観察をするようにしてください。

大丈夫そうに見えてもぼーっとした状態が続いたりふらついたりすることがありますので、本人が大丈夫と言っても発作直後は見守りが必要です。

本人が大丈夫と判断し、周囲から見ても普段通りの状態に戻った場合は通常の活動に復帰していただいて結構です。

しばらく休んでもなかなかすっきりしない、気持ち悪い、頭痛が長引くなどの場合は受診を考えてもよいでしょう。

どんなときに救急車を呼べばいいの?

てんかん発作が起きたからといって必ず救急車を呼ばなければならないわけではありません。

大きな発作であってもいつもと同じ発作で短い発作であれば、救急車で病院に運ばれても何もすることはなく、基本的には外来でのお薬の調整になります。

そもそも救急車は診断や治療を急ぐ一刻を争う状態に要請するものであり、そうでなければ普通に受診して頂くか、後日主治医に報告する形で結構です。

そうすると、救急車で病院に急いで行かなければならないのは

  • 急いで診断や治療をしなければならないてんかん以外の病気の可能性がある
  • てんかん発作だが止まらないため病院で注射薬を使って発作を止めなければならないとき
  • 発作は止まっているが大きな怪我をしてしまって急いで処置が必要なとき

この3つの場合に限られてくるかと思います。

急いで診断や治療をしなければならないてんかん以外の病気の可能性がある

けいれんなどのてんかん発作のような症状を引き起こす脳梗塞や脳出血などの脳卒中、脳炎・脳症・髄膜炎、何らかの原因による心停止などです。治療が遅れると命に関わったり後遺症を残す可能性のある疾患です。

てんかんの患者様であっても、いつもと違う発作、発熱や麻痺などいつもと違う症状を伴っていたり、発作は止まっても意識が戻らないなどの場合は救急車で受診する必要があります。

てんかん発作だが止まらないため病院で注射薬を使って発作を止めなければならないとき

いつもと同じてんかん発作であっても、5~10分以上続く場合はそのまま止まらない可能性があります。その場合、発作を止めるための頓服薬を持っている場合は使って頂いて構いませんが、基本的には注射薬で止める必要がありますので救急車で病院へ運んでもらいましょう。

発作は止まっているが大きな怪我をしてしまって急いで処置が必要なとき

小さな怪我なら良いのですが、たとえば頭から倒れて意識を失って大量に出血をしている、車にひかれてしまった、溺れてしまった、広範囲のやけどをしてしまったなどの場合は救急車で受診しましょう。

発作が起きたときの対応は主治医や家族などと共有しておきましょう

ここまで発作が起きたときの一般的な対応について解説してきました。

しかし、冒頭で述べたように発作の症状は十人十色で、てんかんの種類や発作の種類によってその対応も人によって違います。

発作が起きたときに本人がどうするのか、周囲の人がどうするのか、主治医や家族などの関係者で日頃からよく話し合って共有しておくとよいでしょう。

当院では発作時の対応についての助言、学校や職場などへの伝え方などのご相談にも乗っております。お気軽にご相談ください。

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