もしかしててんかんかも? – てんかんの発作を疑う症状

てんかん発作にはいろいろな症状がありますが、てんかん以外の症状も含め、「これってもしかしててんかんかも?」とよく疑われる症状からどのような疾患が考えられるかまとめてみました。

「けいれん」とは

てんかん=けいれんする病気、と思われている方も多いのではないでしょうか?

確かにてんかんでけいれんすることはありますが、てんかんの症状はけいれんだけではありませんし、逆にけいれんしたからといっててんかんという訳ではありません

いわゆる「けいれん」と表現される症状は、意識を失って白目をむいて時に口から泡を吹き、全身に力が入って両腕を曲げて両足を突っ張り、ギュー、ブルブル、ガクガク、ガクンガクンと震えるものかと思います。

てんかんの分類の記事をご参照いただけると詳しく解説してありますが、これは強直(間代)発作と呼ばれる発作のことで、小児期発症のてんかんでは見られることが多いです。

それ以外にも「目がけいれんしました」「熱が上がるときにけいれんしていました」などの訴えで受診される方もいらっしゃいます。

目や手の単発のピクツキはほとんどの場合ミオクローヌスと呼ばれるもので、中にはてんかんによるミオクローヌスのこともありますが、ほとんどが異常ではないミオクローヌスです。代表的なものは寝入りに手がピクつく入眠時ミオクローヌスです。

熱が上がるときの症状は多くは悪寒に伴うシバリングと呼ばれるもので、意識が保たれていて(具合が悪いので反応が乏しいこともありますが)体温が上がりきるとケロッとしていることがほとんどです。

このように一般的な用語としての「けいれん」はさまざまなピクツキや震えを含む表現として多用されていますが、医療従事者が使用する「けいれん」は「強直間代発作」のことを指していると思って頂いて良いかと思います。

てんかん発作の種類

けいれん(=強直間代発作)はてんかん発作のひとつではありますすが、てんかん発作はそれだけではありません。

まず、てんかん発作は脳の一部が興奮して起こる焦点起始発作と、脳の全体が一気に興奮して起こる全般起始発作に分類されます(てんかんの分類参照)。

焦点起始発作

焦点起始発作は脳の一部しか興奮しませんので、脳の一部が興奮したときに見られる症状としてさまざまな症状が見られます。

意識が保たれた状態で体の一部がピクピクしたり、突然気持ち悪くなったり、口をぺちゃぺちゃとならしたり、めまいが生じたり、自分がどこにいるのか分からなくなったり、初めての場所でも来たことがあるように感じたり、その他にも多彩な症状が見られます。脳の電気的に興奮した場所が担当する役割の機能が前面に出てきますので、「なんでもあり」と思って頂いて結構です。

なんでもありですが、「発作」なので発作ではないときは無症状です。発作性に何か症状が出てくる場合はどんな症状であってもてんかん発作の可能性を考えなければなりません

脳の興奮の範囲が少し広いと意識を失う発作を起こすこともあり、意識を失ってぼーっとしていたり、時に嘔吐を伴ったり、全身のけいれんに進展することもあります。

全般起始発作

脳の全体が興奮する全般起始発作の代表はけいれん=強直間代発作ですが、その他にミオクロニー発作(てんかん性ミオクローヌス)、欠神発作、脱力発作などがあります。

いずれも脳の全体が一気に興奮する発作で、一部の筋肉が瞬間的にピクッと収縮するのがミオクロニー発作、姿勢を保つための大きな筋肉が瞬間的に脱力してストンッと倒れてしまうのが脱力発作です。

欠神発作は、突然意識がなくなりぼーっとしているように見える発作で、体が傾くことはあっても基本的に倒れることはありません。ぼーっとしている間に口をもごもごしたり手を動かしたりすることもあり、発作と気づかれないことも多いです。

年齢ごとによく見られる、てんかんを疑われる症状

てんかんの症状は「なんでもあり」と書きましたが、年齢ごとによく見られる症状と、疑われるてんかん、てんかん以外の疾患もあります。外来でよく相談される代表的な症状について解説していきます。

いずれの症状も言葉ではなかなか理解しづらく伝わりづらいと思いますので、ご心配な症状はスマートフォンなどで動画を撮影して小児神経科医に相談されることをお勧め致します。

新生児期〜乳児期

生まれて間もない赤ちゃんが寝入ったときにピクピクプルプルと震えている

赤ちゃんが寝入ったと思ったらプルプルピクピク震えていることがあります。体が小さいので全身が震えているように見えますが、基本的には手足のみの震えで、不規則な震えです。見た目にはスヤスヤ穏やかに眠っています

これは良性新生児睡眠時ミオクローヌスと呼ばれるもので、学童期以降にも見られる睡眠時ミオクローヌスと同様に非てんかん性のミオクローヌスで異常ではありません

入眠時のミオクローヌスはどの年齢でも見られますが、良性新生児睡眠時ミオクローヌスは反復することが特徴で、単発のミオクローヌスが何回も生じているためにピクピクプルプルに見えるだけでよく見ると不規則な震えであることが特徴です。

両手を挙げる動作を繰り返す、しゃっくりみたいな動き

新生児期~乳児期早期に見られるモロー反射も繰り返すとてんかんではないかと心配される方が多くいらっしゃいます。

モロー反射は両手を開いてあわあわする原始反射で、3~4か月頃にはあまり見られなくなってきます。ちょっとした刺激で出現するため、繰り返しているように見えることもあります。

しゃっくりはおなかいっぱいに飲んでパンパンに膨らんだ胃が横隔膜を圧迫することによって生じ、ゲップや吐き戻しによって胃の圧力が解除されると止まったりします。新生児期~乳児期早期は頻繁に、場合によっては授乳の度に見られたりしますが、哺乳やゲップが上手になったり、離乳食に移行していくと徐々に頻度は減少していきます。

この症状でもっとも心配しなければならないのは、生後6か月前後で発症するウエスト症候群で見られるてんかん性スパスムです。両肩をすくめるように両手を持ち上げ、座っていたりすると前に倒れ込むような動作が見られることもあり、それらを数十秒おきに繰り返します。モロー反射やしゃっくりよりも動作の1回あたりの持続時間はやや長めです。

基本的に月齢や動作から区別はできますがなかなか難しいことも多く、ウエスト症候群は脳波検査により診断も否定も可能ですが治療を急ぐ疾患になりますので、心配な場合はスマートフォンなどで動画を撮影して早めに小児神経科医に相談されると良いでしょう。

食事中に突然数秒間、身震いのように震える

乳児期~幼児期に、主に授乳中や食事中に数秒間肩をすくめて身震いすることがあります。これは身震い発作(シャダリング)と呼ばれる動きで、病的ではありません

食事に関連したとき以外にも何か楽しいことをしているときなどに見られ、年齢とともに見られなくなっていきます。

顔を真っ赤にして力を入れている

女児に多いのですが、うつ伏せや座った状態で顔を真っ赤にして力を入れたり、リズミカルに体を揺らしたりすることがあります。男児にも見られ仰向けでもみられますが、反応が乏しくなったりいつもと違う表情をしたりするので心配される方が多くいらっしゃいます。これは乳児のマスターベーション(自慰行為)と呼ばれる動きで病的ではありません

似た動きで授乳後30分以内に全身がこわばる動きや後ろに反り返るが見られることがありますが、これは胃食道逆流の可能性があります。

いずれもけいれんと違って持続時間は短く、変な表情をしていても基本的に意識は保たれています。ただ、短い強直発作との区別はなかなか話をうかがうだけでは難しかったりします。

ビデオを持参して頂ければけいれん=強直(間代)発作との区別は比較的容易ですが、難しい場合もシチュエーションを再現して脳波を記録することで発作時の脳波が確認できれば診断の助けになります。

激しく泣いた後にけいれんした

大泣きをしたのちに顔が真っ黒または真っ白になってその後全身のけいれんとなることがあります。

いわゆる泣き入りひきつけ、医学的には憤怒けいれんと呼ばれるものの可能性が高いです。

憤怒けいれんであれば持続時間は1分以内、多いときは毎週のように起こすこともありますが、基本的には良性の疾患で3歳頃までには起こさなくなります。あまりに頻度が多い場合や症状が重い場合には治療をすることもあります。

しかし似たような症状を起こす原因として重大な病気もありますので、それらを見逃さないようにしなければなりません。

けいれんののちに麻痺を伴う場合にはもやもや病に伴う一過性脳虚血発作を、心停止を伴う場合は不整脈や先天性心疾患を考えなければなりません。その他にも気管狭窄症などで低酸素となってチアノーゼと失神やけいれんを起こすこともありますので、その他の疾患の否定は必要となってきます。

幼児期〜学童期

発熱にともなう「けいれん」

一般的には高熱に伴って全身のけいれんが起きれば熱性けいれんを考えますが、体温が上昇するときの震え(シバリング)のことを「けいれん」と表現される方もいらっしゃいます。

熱性けいれんのけいれんは強直間代発作なので意識を失いますが、シバリングは体温を上げるために筋肉が震えているだけなので意識は保たれています。ただし、つらいので反応はいつもより鈍いかもしれません。

突然 吐く、「ぐるぐるする」と言う、ふらふらした歩き方になる

片頭痛のなかまで小児良性発作性めまい症というものがあります。突然めまいが生じてふらふらした歩き方になったり、時に嘔吐を伴うこともあります。

幼児期のこどもたちはめまいを上手に表現することができないため、「ぐるぐるする」と言ってくれるとわかりやすいのですが嘔吐やふらついた歩行がめまいによるものと判断するのは非常に困難です。

突然吐く症状はてんかんでも見られますし、ふらふらした歩行は小脳失調などでも見られますので、色々と他の疾患を否定しないと小児良性発作性めまい症とは診断できません。

ご家族に片頭痛を持っている方がいることが多く、おとなになって片頭痛に移行していく方もいらっしゃいます。

しばしば数十秒間ぼーっとして反応がなくなることがある

これまでしていた動作を突然止めて数十秒間動作を止め、突然何事もなかったかのように止まる前の動作を続ける症状が見られたら、欠神発作を疑います。

就学前後で発症する小児欠神てんかんは比較的頻度の高いてんかんになりますが、症状が非常に分かりづらく、1日に何十回と起こしていても全く気づかれていないこともあります。

脳波検査でほぼ診断がつき治療可能ですので、疑わしい場合には脳波検査の可能な医療機関を受診しましょう。

入眠後や寝起きの時間帯に顔面をピクピクさせている

小児てんかんでもっとも頻度の高いローランドてんかんが考えられます。暗いので顔面のピクピクは気づかれず「ペチャペチャ音を立てている」と表現される方もいます。時に全身のけいれんとなることもあり、そこで初めててんかんを疑って受診される方もいらっしゃいます。

寝ている時に突然嘔吐して顔面蒼白となり意識消失する

パナイトポラス症候群という幼児期に比較的多くみられるてんかんで見られる特徴的な症状です。ときに全身のけいれんとなり、重積といって長時間の発作となることがあります。

さすがに重積発作となった場合は救急受診されると思いますが、けいれんがなくても寝ていて突然嘔吐して顔面蒼白となったり意識を失ったりすることを繰り返す場合はてんかんの可能性がありますので脳波検査を受けられることをお勧めします。

発症直後は後頭部に脳波異常が見られることから以前は良性後頭葉てんかんに分類されていましたが、後頭部から徐々に前頭部の方に移動して年齢とともに変化する脳波が特徴です。そういうわけで脳波所見は非常に参考になるのですが、異常所見が後頭部ではないからと間違って否定されてしまうことが残念ながらあるようです。

夜中に突然起き上がって動き回る

夜驚症や夢遊病(睡眠時遊行症)は寝てから1時間半~2時間くらい経過し、レム睡眠(夢を見る眠りの浅い状態)に移行できずに生じる症状です。つまり、深い眠りの時に起こっている症状です。

夜驚症は大泣きしたり叫んだりし、夢遊病は起き上がって歩き回ったりします。いずれも深い眠りの中なので、簡単には起きませんし、起こしたり動作を止めようとすると余計に興奮したりします。放って置いてもそのうち寝ます

夜驚症や夢遊病は基本的に最初のレム睡眠への移行ができないことによる症状なのでほぼ必ず入眠後1時間半頃に症状が見られますが、同じく睡眠中にバタバタする症状を起こすてんかんに前頭葉てんかんがあります。

前頭葉てんかんの過運動発作というバタバタ大暴れする症状は夢遊病によく似ていますが、入眠後1時間半に限らず夜間に何回も起こることがあります。

思春期〜青年期

突然倒れて意識を失った

思春期には起立性調節障害や血管迷走神経反射、不整脈などによる失神で倒れることが多く、てんかんとの区別が必要になってきます。

失神は血圧低下や不整脈などによって一時的に脳への血流が減少することで意識を失うもので、ときにけいれんを伴うこともあります。

「けいれん=てんかん」ではないし、「けいれんがない=てんかんではない」わけでもありません。

思春期にはけいれん=強直間代発作を起こすてんかんの発症も多いため、けいれんによる転倒の可能性もあり、てんかんによるけいれんである可能性も考えなければなりません。

寝起きや朝食中に手がピクついて箸を落としたり味噌汁をこぼしたりする

思春期発症のてんかんで比較的頻度の高い若年ミオクロニーてんかんでしばしば見られる症状です。起床後、特に食事中に多いのが特徴的です。

脳波検査の光刺激で反応が見られたり特徴的な脳波が見られます。全身のけいれんを伴うこともあり、治療に対する反応は良好ですが治療を継続しなければならないことも多く、正しく診断して治療をする必要があります。

視界がギラギラし見えづらいところが出てきてから激しい頭痛と嘔吐をする

いわゆる前兆を伴う片頭痛でしばしば見られる前兆です。

視界がギラギラして見えづらいところが出るというのは閃輝暗点と呼ばれる症状で、米国メイヨークリニックのYouTubeでわかりやすく動画にして解説されています。

Migraine Visual Aura
Migraine Visual Aura by MAYO CLINIC

片頭痛もその他の疾患を除外して診断されるものであるため、てんかんや脳内の他の疾患を否定するために一度は脳波検査や画像検査をされておいた方がよいでしょう

高齢者

最近すっぽりと記憶が抜けている時間帯があり物忘れがひどくなったと思うが、普段は今までとあまり変わらない

高齢者の場合は認知症と間違われることが多く注意が必要です。

ほとんどのてんかんは発作性の症状で数分間のことが多いのですが、高齢者てんかんは非けいれん性てんかん重積状態と言って、数十分から数時間発作が持続することがあります。その間は反応が乏しく本人も意識を失っていたりするので、認知症と間違われてしまうことがあります。

症状があるときに脳波検査をしててんかん発作の脳波を捉えられれば診断がつきます。

もしかしててんかんかも?と思ったらビデオ撮影を

てんかん発作の特徴や、てんかんと間違われやすい発作性の症状の特徴を解説しました。

最近ではスマートフォンが普及し気軽に動画撮影ができるようになりましたので、何か変だと思ったら動画で記録を残しておき、受診の際に医師に見てもらうと良いでしょう。

当院では検査の空きがあれば受診当日の脳波検査も可能な場合があります。気になる症状があり脳波検査をご希望の方はお気軽にお電話でご相談ください。

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