ウエスト症候群(点頭てんかん)

てんかんに伴う大脳の異常な電気活動によって発達の退行などを伴う疾患を「てんかん性脳症」と総称しますが、その中でも代表的な疾患であるウエスト症候群(点頭てんかん)について解説します。

概要

乳児期に発症するてんかん性脳症で、特徴的な発作、脳波異常、発達の停滞または退行を特徴とします。難治に経過することも多いのですが、適切な治療により治癒を目指すこともできますので、早期診断と早期治療が重要です。

好発年齢

3か月から12か月の乳児期に発症します。ほとんどの方が1歳未満で発症し、ピークは4か月~7か月頃でやや男児に多いといわれています。

発作・症状

点頭発作(専門的にはてんかん性スパズム)という、四肢を屈曲または伸展して頭部をカクンと前屈させる動作を5~30秒おきに繰り返す(発作を繰り返すことをシリーズ形成といいます)発作が特徴的です。

四肢の動きは寝入りのミオクローヌスのような一瞬のピクツキとは異なり、1-2秒間りきむようにギューッとする動作です。

おすわりを獲得していないお子さんでは頭部の前屈がみられないことも多く、両肩をすくめるような動きを10数秒おきに繰り返すシリーズ形成がこの発作の最大の特徴となります。

月齢的にモロー反射や驚愕反応、しゃっくりなどと間違われることも多く、見慣れていないと小児科医でも診断に時間のかかることがあります。

最初の頃はシリーズ形成をせず単発の発作が1日1~2回程度しかみられないことも多く、少しずつシリーズを形成するようになり発作の頻度も増えていきます。

YouTubeでinfantile spasmsと検索すると多くの発作ビデオが投稿されていますので大変参考になります。

発作が出現する少し前頃から発達の停滞がみられ、坐位や寝返りができなくなるといった明らかな退行は発作出現後しばらく経過してからみられるようになります。

そのため発症直後は判断が難しいことも多いのですが、以前より笑わなくなった、など以前と違った様子がみられます。

診断

前述の点頭発作、ヒプスアリスミアと呼ばれる特徴的な脳波所見(図1)、発達の停滞または退行がみられると本疾患と診断されます。

図1 8か月男児 一部同期性が保たれているところもあるが、多焦点性に棘波、多棘波、棘徐波などの多彩な突発波が不規則かつ無秩序に出現しており、ヒプスアリスミアの所見。

70~80%の方が何らかの基礎疾患を有すると言われており、症候性ウエスト症候群と呼ばれます。具体的には結節性硬化症、先天的な脳の形成異常、周産期障害による脳性麻痺、ダウン症などの染色体異常症、遺伝子異常症、先天性代謝異常症などです。

発症までの経過で問題がなくとも、発症後の精査で基礎疾患の判明する方もいらっしゃいます。そのため、本疾患を発症した場合は治療開始前にいろいろと検査をして基礎疾患の検索をします。

治療

本疾患に有効と言われている治療法に、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)療法とビガバトリンがあります。

ビガバトリンは日本では2015年に承認された比較的新しい薬剤です。本疾患に対して高い有効性が認められていますが、進行性の視野狭窄が副作用としてみられることから、網膜電図という専門的な眼科の検査が実施できる施設でしか処方ができず、その施設は非常に限られています。

ACTH療法は2週間毎日筋肉注射で投与し、2週間かけて減量する計1か月の入院を要する治療です。ステロイドとほぼ同様の副作用を認め注意の必要な副作用も多いのですが、いずれも一過性のものであり、免疫不全症や心臓合併症など特定の併存疾患をのぞけばきちんと副作用チェックを定期的に実施しながら管理された上であれば多くの場合は安全に実施できます。

安全性と治療可能な施設が多いという点から、日本ではACTH療法が一般的に選択されます。ただし、ACTH療法では心臓腫瘍を増大させる恐れがあること、多くの研究で特に有効性が示されていることから、結節性硬化症のウエスト症候群に限ってはビガバトリンが第一選択となることが多いです。

以前は発症してからビタミンB6やバルプロ酸ナトリウムなどで治療を開始し、その後ACTH療法が選択されていましたが、早期に発作を抑制し脳波を改善することが発達の予後を改善することから、近年では診断後は早期にACTH療法が開始されます。

発症から発作抑止や脳波改善までの期間が長いほど発達の退行が進行し予後にも影響することがわかってきており、可能な限り早期に、できれば発症から1か月以内に有効な治療を開始することが望まれます。

予後

1/3の方は発作が消失しますが、2/3の方が別のてんかんへ移行し、中には難治のてんかん性脳症であるレノックス・ガストー症候群に移行する方が少なからずいらっしゃいます。

しかし、20~25%の方は治療により発達がほぼ正常になると言われており、基礎疾患のない潜因性ウエスト症候群に限れば半数以上で発作消失や正常発達が得られると言われています。

発症からなるべく早く有効な治療を開始し、発作を抑制して脳波を改善することが予後を改善します。

本疾患は脳波検査により診断も否定もできますので、治療開始を遅らせないためにも、疑う症状がみられた場合は可能な限り早く脳波検査を行うことが重要です。

発作の様子が診断には不可欠なので、ウエスト症候群かもしれない、と思ったらスマートフォンなどで動画を撮影してから受診されると良いでしょう。

当院では乳児の脳波も対応可能ですので、気になる症状のある方はお気軽にご相談ください。

診断がついた場合はすぐに治療が開始できるよう速やかに周辺の連携施設にご紹介し、治療後は当院でフォローや治療の継続を行う、といった強固な医療連携体制がありますのでご安心ください。

本疾患は小児慢性特定疾病および指定難病となっており、診断された場合には医療費の助成を受けることができます。また、患者家族会では患者様とご家族様の情報交換や交流を持つことができます。

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