当院のてんかん診療実績(令和2年度上半期)

2020年4月の開院から約半年間(2020年9月8日現在)の当院のてんかん診療実績を公開致します。

てんかん分類

2020年4月~9月に当院を受診された「てんかん」の病名のつく患者様の年齢分布を図1に、てんかん分類別に表1にお示しします。てんかん分類についての詳細はてんかんの分類をご一読ください。

やはり小児の患者様が多く、20歳以上は約1割でした。しかし16~19歳の移行期の患者様も約2割を占めており、今後成人の患者様の比率が高くなっていくことが予想されます。

図1 当院に通院中のてんかん患者の年齢分布

素因性焦点てんかんが45.5%と最も多く、素因性全般てんかん23.2%、構造的焦点てんかん17.0%と続いています。

素因性全般焦点合併てんかんは遺伝子異常を伴う難治てんかんですので、ほぼ図2に示す発達性てんかん性脳症の患者様に一致していると考えられます。

素因性構造的感染性代謝性免疫性病因不明
全般23.2%0.0%0.9%0.0%0.0%0.9%
焦点45.5%17.0%0.0%0.0%0.0%0.0%
全般焦点合併8.0%2.7%0.0%0.9%0.0%0.0%
病型不明0.9%0.0%0.0%0.0%0.0%0.0%
表1 てんかん分類ごとの患者比率

てんかん症候群

2020年4月~9月に当院を受診された患者様の症候群分類を図2にお示しします。全てんかん患者のうち約半数が症候群分類可能でした。

特発性全般てんかんが16.1%と最も多く、ローランドてんかんが14.3%と2番目に多かったです。発達性てんかん性脳症が8.0%と3番目に多いのは当院の特徴かもしれません。

図2 全てんかん患者の症候群分類比率

次に、症候群のうち特発性全般てんかんの内訳を図3に示します。教科書等では小児欠神てんかんも特発性全般てんかんに含めますが、小児欠神てんかんは発症年齢が就学前後と低年齢でローランドてんかんやPanaiotopoulos(パナイトポラス)症候群に近く、その他の思春期発症の特発性全般てんかんと異なり成人移行することも少ないことから当院では分けて分類しております。

個々に示す特発性全般てんかんは基本的に思春期以降発症のもので小児欠神てんかんを除くものとお考え下さい。若年ミオクロニーてんかんと覚醒時大発作てんかんが並んで多く、合わせて約8割を占めていました。

図3 特発性てんかんの内訳

最後に発達性てんかん性脳症の内訳を図4に示します。ドラベ症候群とレノックス・ガストー症候群が並んで多く約3分の2を占めました。その他の方々も遺伝子異常を伴う発達性てんかん性脳症です。

図4 発達性てんかん性脳症の内訳

薬物治療

現在投与中の抗てんかん薬の種類を図5に示します。

1剤のみが約7割ですが、当院では前述の発達性てんかん性脳症を含め難治の方や基礎疾患をお持ちの方が多いことを反映してか、3剤以上が約2割と多いことも当院の特徴かもしれません。

図5 抗てんかん薬の種類の内訳

抗てんかん薬の内訳を図6に示します。レベチラセタム(LEV)が約3分の1と最多でした。次いで古くから全般てんかんの第一選択薬であるバルプロ酸ナトリウム(VPA)、焦点てんかんの第一選択薬であるカルバマゼピン(CBZ)が多く処方されています。

4位以降はほぼ横並びですが、ラモトリギン(LTG)、ラコサミド(LCM)、ペランパネル(PER)といった新規抗てんかん薬が含まれており、今後はこのあたりの薬剤の占める割合が徐々に増えていくものと予想されます。

当院では難治てんかんの方も比較的多いため、ドラベ症候群専用薬であるスティリペントール(STP)やレノックス・ガストー症候群専用薬であるルフィナミド(RFN)も一定の割合を占めています。

*薬剤名はすべて商品名ではなく一般名で記載しております。

図6 抗てんかん薬の内訳

まだ開院して半年足らずですが、どのような患者様に当院へ通院して頂いているのかまとめてみました。

今後当院への受診を検討されている患者様やご家族様、患者様のご紹介をご検討頂いている医療機関様の参考になりますと幸いです。

今後も定期的にこのような情報公開はしていこうと思います。