開業の決意

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現状を打破するためにどうしたらいいのか悩むくらいなら、そういう場所を自分で作ってしまおう。

そう思ったのが最初のきっかけでした。そもそもの始まりは、2018年5月に開催された日本小児神経学会学術集会の長期計画委員会で、患者の成人移行に関する話し合いに出席していた時にさかのぼります。

小児神経疾患のように、基礎疾患が希少疾患であったり、合併症が多く重症度が高い場合にはなかなか成人診療科の医師への移行が進まないことが学会では問題となっていました。小児科医は原則15歳以下の内科医であり、成人疾患については専門外である。しかし成人内科医は小児期発症の希少疾患や合併症に関しては不慣れであり診療に対する抵抗感が強い。移行できなければ小児科に通院し続ける。年齢的に成人の患者が小児科病棟に入院すると各種小児加算が算定されなくなり病院経営上厳しい。だからといって、病棟も不慣れであり成人の病棟も使わせてもらえない。そうやって患者さんだけが議論から取り残されて宙に浮いてしまっているのが重症児の成人移行問題です。

問題点を整理します。小児科医は成人疾患が苦手。成人内科医は小児期発症の疾患が苦手。小児神経科医は小児期発症の神経疾患が専門。では、われわれ小児神経科医は、成人になってからは小児科医としての関わりを終了し、小児神経の専門家として関わり続ければいいのではないでしょうか。成人合併症に関しては、肺炎なら呼吸器内科、消化器がんなら消化器内科、というふうにその都度各専門内科にかかれば良い。ただ、そうするとその振り分けをする主治医が必要になってきます。最近では成人の在宅診療の先生がかなり小児患者も診てくれるようになってきました。そういった先生方に主治医をお願いし、われわれ小児神経科医は患者に関わる専門家の一人として関わり続ければ良い。会議の場で私はそのように発言しました。

学会終了後、私は自分の発言に何か腑に落ちないものを感じて、それが何なのか自問自答し続けました。私たちは確かに高度な専門家です。総合医が主治医となって、専門家として関わり続けることは患者にとっては望ましいことでしょう。ただ、それが本当に自分のやりたい関わり方なのだろうか。本来であれば、ずっと患者に寄り添ってきた私たちが主治医として成人になっても舵取りをし続け、成人になって生じた問題に対しては小児期と同様に適切な専門家にその都度紹介していくという、ハブの役割を果たし続けるべきなのではないか。そんな当たり前のことがなぜ出来ていないのか。それは病院という組織のしがらみの中に自分が居るからである。病院の外に出て、しがらみのない独立した診療所であれば、各問題ごとにより適切な施設に繋ぐことができ、医療連携の観点から受け入れる側も受け入れやすい。そうすれば成人になった患者も安心して通い続けられるのではないか。そう気づいた時に、これまでのもやもやが消え去り、視界がさっと開けたのでした。

私は小児神経専門医、てんかん専門医である以前に、根本的には小児科専門医です。小児神経専門医やてんかん専門医の資格を維持するためには小児科専門医を維持しないとならないのです。しかし、開業を決意してから改めて私の外来の患者家族の方たちの話に耳を傾けると、様々な理由(多くは、落ち着いて待っていられない、周りの目が気になる、バギーが入らない、など)から一般のクリニックにはなかなか通いづらいということがよくわかりました。よし、それならば私は一般小児科医の服を脱ぎ捨て、彼らが安心して通い続けられる居場所をこの手で作ろうではないか、とそう決意したのです。

私の専門とするてんかんと小児期発症の小児神経疾患の患者様とそのご家族様が、安心して一生通い続けられる、そんなクリニックを目指して準備を進めてまいります!

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